存在の理由

なんて身勝手な…それが思った事。





「皆城君。翔子を…翔子を還してっ!!」
縋るような声音に、どう返せば良いというのか。
「あれの適任者は彼女です。貴女もご存知の筈ですが」
「だけどっ…」
尚も言い募る相手に、言える言葉はただひとつ。
何故ならば…。


「僕たちは、その為の子どもの筈です」



内心の動揺は声に出なかっただろうか。
抑えつけた分、自分の声は更に平坦で、きっと冷淡にすら聞こえるだろう。
驚きに見開いた瞳は揺れて…。
ファフナーに乗り込んだ羽佐間。接続された意識から流れ込む想いに、先程乗り込む前に交わされたのであろう、偽りの親子の会話が悟れた。

何故…本当の事を羽佐間が知っているのか…そんな事は解らない。
ただ感じたもの。
先に乗った一騎には「大丈夫」と、戦場に送り込んだ癖に。自分の子供はそんなにも守りたいのか…と、嘲りの笑みが浮かぶ。
けれど、そんな相手の感情に――たとえ養子であろうと、子どもだと。愛しているのだと――ほんの少しだけ。救われる自分も確かに居て。
なんて身勝手な…。
先程と同じ言葉を…今度は自分に向けて放つ。
そして外部からのモニタを切り、戦闘にだけ集中する。


「羽佐間。それではムリだ!!」

訓練などろくにして居ないのだから、当たり前とは言えど…これは無茶すぎる。
ただひたすら単調な攻撃のみを繰り返す少女に。けれど制止の言葉は通じず。
流れ込む想いはただひとつ。



『この島を…一騎君の島を守りたい』



迷いもなく輝く、思い。
だが思いだけでは何もできない、この輝く敵の前では何の力にもならないのだ。
それなのに、何故。
ここまで…。


「羽佐間。もう良い…離れるんだ」
機体にファスティムをくくりつけ…上昇する。無茶だったが成功したと思われた行動は、少女が放った…次の言葉に凍りつく。
「離れない」
それは、ファフナーとフェスティムの同化を意味するもの。
そうなってしまえば…もう。残された道は…。
「皆城君。フェンリルを起動するわ」
何も無いように呟かれ、起動するシステム。
止める間も無く表示されるカウントダウンの数字に、もう…。
僕に返せる言葉は残っていなかった。



「翔子ーーー!!!!」
制止さえ聞かず、上昇する羽佐間を…追いかける一騎。
その目の前で…白く輝く…その機体。
どちらの姿も、そしてどちらも間に合わないのを知りつつ。何もできない自分。
無力なのは一体誰なのか。
「皆城君…」
他の誰にも聞こえないだろう。ジークフリードシステムを介して聞こえる…小さな声。

「          」

ああ。
自分の心のままに戦った…君は後悔などしていない。
解っている。
解っているけれど。

『あまり親しくしない方が良い。
 もう。友達のままではいられないのだから…』

つい先だって、自分が一騎に言った言葉。それは確かに…そういう意味であっただろうが…。
だけど、こんな結末…僕だって望んでなど居ない。




閉じた瞳の端から流れる、何かは抑える事は出来なかった。



<--! 総士視点で、本編ネタバレ。私…こういうもじったのが一番楽です…つまり独創性ゼロ?(苦笑)
自己犠牲は美しくかかれれば描かれるほど、嫌な気分になります。翔子は納得して、好きなようにやって散ったから良いけれど。
残された方は…やっぱ…ね。
そして…総士視点って…おと…乙女に…。な…(涙)知り合いからの「総士のが乙女ですよ」の呪いが発動しそうです…。一総になっちゃったらどうするのよーう。助けて縲怐i笑)
--> 04.08.16UP


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