19:切に願う

「ちっせーな…」
だーとかあーとか意味不明の音を口から出して動く赤ん坊に、アカツキは決して触れる事の無い自分の指をのばす。
「アカツキの事、見えてるんじゃないのか?」
「どーだか…」
本来、降神していない式神は普通の人間には見る事の出来ない存在だ。
けれど、この赤ん坊は…闘神士の子。
見えていても不思議は無い。
「あー」
大きな目を細めて、言葉とともに揺れる小さな手。
自分の爪ほども無いその手に、かさねるように指を出してやれば。
握ろうとしているのか、もみじのような手が揺れる。
「ほら、見えてるじゃないか」
「……みてえだな」
「あ あ うぅ~?」
「ほら、アカツキって呼んでるよ」
かわいいねえ。
そういって目尻を下げる契約者の姿は、子供が生まれる前からは想像もつかない。
「どんだけ親バカよ。オマエ…」
こうなってしまえば、モンジュは自分の言葉など聞いていたためしが無い。短い間に学習したアカツキはがっくりと項垂れる。
案の定。己の式神の様子など気にせず、よしよしと赤子を揺らすモンジュにそれでも一言物申そうとアカツキが顔をあげた瞬間。
視線の合わさった真っ黒な、黒曜石の瞳が細められ…。
「ほら、笑った!」
まだ乏しい赤ん坊の表情。
それでも解る笑みに、モンジュが歓声をあげる。
「アカツキ?」
いきなり黙り込んだ自分にどうした?と視線で問うモンジュになんでもねえよ。と返し、白虎は願う。
この赤ん坊が大きくなったその時に、またこうやって笑いあえますように。
闘う事しかできない。
その為の存在である自分が、そんな事を願うのは少しおかしい気がするけれども。
たまにはそんな気分になってもいいだろう。
小さく口の端を持ち上げ、白き獣は輝く瞳を覗き込んだ。
















