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存在の理由

  • 2006/04/04

なんて身勝手な…それが思った事。










「皆城君。翔子を…翔子を還してっ!!」

縋るような声音に、どう返せば良いというのか。

「あれの適任者は彼女です。貴女もご存知の筈ですが」

「だけどっ…」

尚も言い募る相手に、言える言葉はただひとつ。

何故ならば…。





「僕たちは、その為の子どもの筈です」







内心の動揺は声に出なかっただろうか。

抑えつけた分、自分の声は更に平坦で、きっと冷淡にすら聞こえるだろう。

驚きに見開いた瞳は揺れて…。

ファフナーに乗り込んだ羽佐間。接続された意識から流れ込む想いに、先程乗り込む前に交わされたのであろう、偽りの親子の会話が悟れた。



何故…本当の事を羽佐間が知っているのか…そんな事は解らない。

ただ感じたもの。

先に乗った一騎には「大丈夫」と、戦場に送り込んだ癖に。自分の子供はそんなにも守りたいのか…と、嘲りの笑みが浮かぶ。

けれど、そんな相手の感情に――たとえ養子であろうと、子どもだと。愛しているのだと――ほんの少しだけ。救われる自分も確かに居て。

なんて身勝手な…。

先程と同じ言葉を…今度は自分に向けて放つ。

そして外部からのモニタを切り、戦闘にだけ集中する。




「羽佐間。それではムリだ!!」



訓練などろくにして居ないのだから、当たり前とは言えど…これは無茶すぎる。

ただひたすら単調な攻撃のみを繰り返す少女に。けれど制止の言葉は通じず。

流れ込む想いはただひとつ。






『この島を…一騎君の島を守りたい』







迷いもなく輝く、思い。

だが思いだけでは何もできない、この輝く敵の前では何の力にもならないのだ。

それなのに、何故。

ここまで…。





「羽佐間。もう良い…離れるんだ」

機体にファスティムをくくりつけ…上昇する。無茶だったが成功したと思われた行動は、少女が放った…次の言葉に凍りつく。

「離れない」

それは、ファフナーとフェスティムの同化を意味するもの。

そうなってしまえば…もう。残された道は…。

「皆城君。フェンリルを起動するわ」

何も無いように呟かれ、起動するシステム。

止める間も無く表示されるカウントダウンの数字に、もう…。

僕に返せる言葉は残っていなかった。







「翔子ーーー!!!!」

制止さえ聞かず、上昇する羽佐間を…追いかける一騎。

その目の前で…白く輝く…その機体。

どちらの姿も、そしてどちらも間に合わないのを知りつつ。何もできない自分。

無力なのは一体誰なのか。

「皆城君…」

他の誰にも聞こえないだろう。ジークフリードシステムを介して聞こえる…小さな声。



「          」



ああ。

自分の心のままに戦った…君は後悔などしていない。

解っている。

解っているけれど。



『あまり親しくしない方が良い。

 もう。友達のままではいられないのだから…』



つい先だって、自分が一騎に言った言葉。それは確かに…そういう意味であっただろうが…。

だけど、こんな結末…僕だって望んでなど居ない。









閉じた瞳の端から流れる、何かは抑える事は出来なかった。







04.08.16UP

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