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第2話 策謀

その女が身に纏っているのだろうか。ひどく甘い香りが辺りに流れた。 「今はそれどころじゃない」 自分に体をすり寄せている女を冷たく一瞥し、セッツァーは男たちに向き直り話の続きを聞こうとする。 「そんな事いわないでさあ」 だがそれは首にまわされた女の腕に止められてしまった。 めんどくせえ…。舌打ちしながらセッツァーは無理やり女を引き剥がそうとするが、逆に抱きつかれてしまう。 耳元に感じるの...

第3話 邂逅

コーリンゲンの村の先にある切り立った岬。 まさしく断崖絶壁と呼ぶのにふさわしいその崖の下…冷ややかな月光の波しぶきを受け、それは存在した。 月夜に浮かび上がる純白の飛空挺。 さながら一枚の絵画の様な光景は、見るものを魅了する力を宿す。 「すげえ…」 捜し求めた存在を目の当たりにして彼は背筋がぞくりとするのを感じた。 それは命をかけたギャンブルをしている時の高揚感と似ていて…明らかに違...

第4話 真緋 ake

何故か解らなかった…。 あえて言えば直感というモノが働いたとしか言えない。 セッツァーが部屋から出る為に扉に手をかけようとした、その時。 無意識に体は横に飛び………。 見上げれば、先程までセッツァーが立っていた場所に何かが突き刺さっていた。 「な………」 視線の先にうつる物は、細かな装飾と宝石をあしらった柄。曇りの無い銀色の煌き…。 ギャンブラーの彼にとっては見慣れたそれは、ゲームに使...

第5話 静寂の彼方

首筋に鈍痛が走る。 (何所かにぶつけたっけかな) 浮上する意識の中。感じた覚えの無い鈍い痛みに、セッツァーは彷徨う己の意識をかき集めた。 ソファーで寝てしまった所為で寝違えたのだろうか? 自分の体の下。ふわりとした、しかし寝るには少々固めのソファーのような感触にふと考える。 (そうか…俺はファルコンを探して…) 他には存在しないと思っていた飛空挺。己の夢の結晶…最高の翼『ブラックジャック』...

第1話 砂漠に吹く風

    「何をやっている…」 呆れた声が後ろから響く。 その声に彼はイタズラが見つかった子供の様に肩をすくめた。 目の前に有るのは重い輝きを放つ鋼鉄の扉。軽量化された船体には見合わないほどの厚みの…その先にはこの船のエンジンルーム…ファルコンの全てが有る。 「……まったく。油断も隙も無いな…」 しかも懲りていないときたものだ。 きっと少し眉をあげて…呟かれる。こ...

第2話 知られざる秘密

    町に近づくにつれ漂う匂いが…空気が変わる。 焦げたような喉を刺す異臭と錆びた鉄のような匂い…むせ返るようなソレは、視界の端に映り始めた赤い色と合わせ。その先に有る惨状を十分にに予想させるものだった。 「くそっ…着地できる場所を見つけろ!」 一人でも多く生存者を探すんだ。 ダリルの声にファルコンは崩れ落ちた家の間をかいくぐる様に進む。 舐めるように建物の表面をは...

第3話 知られざる真実.2

  炎とは違う赤。 突然瓦礫の中からあらわれた人影にセッツァーは帝国兵か?と、一瞬身構える。 だがそれが長い女の髪だと気づいて気緩めた瞬間に、同じく身構えていたダリルが何かを叫びながら走りだした。 「一体何が有った!」 火や煙にやられたのだろうか。崩れ落ちる体を抱き寄せながらダリルは女に問い詰める。乱れた髪に隠されて彼の位置からその女の表情は読み取れなか...

第4話 過ぎ去りし永遠の日々

  「珍しいな」 こんな時間にお前さんが来るなんて。 茶化すように声をかけると、真夜中の訪問者は黙って手にしたボトルを上げてみせた。 「せっかくの土産はいらないようだな」 薄く紅をさしたような口の端を上げてやり返され、セッツァーはやれやれと肩をすくめ。部屋に設置された棚から上等のグラスをとりだす。 「で、どうしたんだ?」 良い音を立て、ボトルの蓋が開く。 黙ってボトルを向ける相手に...

第5話 その先にあるもの

   窓から一筋の光が差し込み…空のまま放置されたグラスに反射する。 その光が闇に慣れた目に眩しくて…瞳を細めてセッツァーは窓の外に視線をめぐらせた。 雲間から覗く淡い日の光。 「いつのまにか夜が明け出しちまったな」 もう寝ろ…と、ティナを送り出してからもうどれくらい過ぎたのだろうか。 気付けば夜は明けだして…新しい日が始まろうとしている。 話し始めた時は、ささくれ立ったままだ...

水底の鏡

    『トビラの事故』で忘れ形見が消えた。 その事件は砦を騒然とさせた。 巨大組織オルダを倒す為に集った、星の兵団を纏める将の一人息子だった。 手を尽くして探させたが、結局何処へと飛ばされたのかも 分からぬまま時は過ぎ、 咲いた花がその命を次に繋ぎそれらが芽吹き始めた頃、 捜索の終了を 軍主はその口で告げた。 トビラには色々な形が...

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